少女騎士が無残にも脱糞してしまったのと同時刻、その骸骨は痩せ細った骨から埃を舞わせ、ボロを腰や肩から垂らしながら動いていた。肉は完全に失われて影も形もなく、生前がどのような顔であったのかは見当も付かない。それは完全に生命活動が停止した生物の残骸にも関わらず、闇の精霊にとり憑かれた結果、骨だけで彷徨い続ける怪物『生きる屍』と化した哀れな存在だった。 そいつは光に虫が集まるように生者に引き寄せられ、人間を襲う凶暴な性質を持っている。死んでいるからこそ生きるのに必要な命を欲しているのか、それとも生者への嫉みや僻みがそうさせるのかは分からない。確かなことは、生きる人間には天敵とも言える有害な存在であることのみだ。 そいつは音を立てずに、静かに静かに獲物の元へと忍び寄る……。
「止まって! 止まってよぉ! 止まってぇ!」 頭の中が爆発するようなショックに騎士の誇りが崩壊する中、汚物の塊が下着を飽和させて腿に零れていく。広がる粘質の存在感と下半身に纏わり付く温かさ、肌を滑る痒さが入り乱れて理性を揺さぶり、記憶の引き出しから幼少の苦い記憶までも呼び起こしてくる。 (やだっ! お漏らししちゃった! やだ、ヤダヤダヤダ!) 純白の下着に広がる焦茶色の悪夢と、泣き叫ぶ幼少の自分の姿が、強く凛々しく成長したはずの己の痴態と重なり合う。これは自分ではないという支離滅裂な拒絶は現実の拒絶。自分が上げた声が過去か現実か分からなくなる。悲鳴を上げたのはどちらの自分なのか。 「いやああああああっ!」 綺麗に手入れされた爪の隙間に詰まった臭い汚物を凝視し、手のひらに濃淡を付けて広がる便汁から目を逸らし、太股の内側を伝い落ちた昨夜の食事の成れの果てをスカートで必死に拭う幼い自分。とても臭いのに自然と受け入れてしまう不思議な匂いに、泥団子のような糞団子を手で持つ幼い自分。 (うそっ! ウソだ! こんなの、違う! どうして!? 私!?) 「はあっ! はあっ! はあっ!」 騎士の少女は呼気を荒げながら腰の甲冑を外す作業を再開する。肛門の圧迫感が和らいだ代わりに、漏れ続ける液便の存在感が股間部で増し続け、防刃タイツから茶色い便汁が染みて内股に広がり始めていた。 「外れた!」 鈍い音を立てて甲冑が少女の腰から地に落ちる。間髪いれずにタイツと下着を下ろし、しゃがみ込んで排便の姿勢を整えようとする。引きずり降ろした下着とタイツの中は焦茶色の湖と化しており、昨日食べた夕食の野菜と思しき繊維片や豆の姿が浮かんでいる。鍛えられた腿には汚物が雫を垂らしてこびり付き、時より流れてはぽたぽたと地面に落下していた。 (戦場でもないのに漏らしたなんて……帰ったら、みんなにどう言えば……) 今すぐに汚物塗れのタイツを脱いでしまいたいが、それには足の甲冑まで脱がなければならない。今の騎士の少女にその余裕はなく、膝までタイツを下ろした状態で尻を背後に突き出し、用を足すべくすべく腰を屈めようと試みた。 「うううっ、まだ……出るぅ!」 ブボボッ、と汚い音を立ててガスと液状の便が肛門から垂れ落ち、一部はまだタイツの汚池に落下した。さらに背を丸めての用を足す体勢になり、排泄だけは終えようとした騎士の少女だが、ここで別の落とし穴があった。 「ああっ、そんなっ!」 タイツと下着を半端にヒザまで下ろして用を足す体勢になると、糞塗れのタイツが甲冑の腹部に押し当てられて傾いた。白銀で守られた腹部を、茶色い滝と化した液便が流れ落ちる。気付いた時には既に遅く、白い光沢が美しい甲冑には異臭を放つ便がこびり付いていた。 「もう……いやぁ……どうすればいいのよ……」 騎士の少女は泣きそうな顔になりながらも、先ずは排泄を終えてしまおうと力み始めた。尻からは未だ勢い良く汚物が飛び出して山を作り、腹の奥では岩を転がすような音が鳴り続けていた。便は水分の割合が増して既に固形を保てていない。変調をきたした腸が消化できないままの食物まで下しているのである。 「うう、ううううんっ! う……ううううんっ!」 気張るたびに尻から飛び出してくる汚物の量に戸惑いながらも、騎士の少女は汚れた手を握り締め、歯を食い縛りながら腸の中身を捻り出していく。水分を吸収されずに漏れた便はとぐろも巻けず、スライムのようにドロドロの山になった。
そのとき、少女を照らす光球が、風に吹かれる蝋燭のように揺れた。
「な、何かいる!?」 魔物の気配を察知した後で、定期的に行わなければならない索敵魔法が疎かになっていたことに気付いた。騎士の少女は液体の便を尻から垂れ流しながら立ち上がり、茶色く汚れて冷たくなったタイツを急いで引き上げる。冷えた汚物の感触が下半身に広がるのは不快だが、タイツを下ろしたままでは動くこともままならない。 少女がタイツを履き直している間に暗闇から現れたのは、五臓六腑の代わりに闇の魔力が満ちた人間の骸骨だった。関節を小刻みに動かして歩いてくる姿は震えるようにも嗤うようにも見えるが、実際に人間の感情は存在しておらず、完全に人間の敵と化したアンデッド系のモンスターである。 闇の精霊が動物や人間の死体を発見したとき、気まぐれに力を分け与えて生まれる魔物『生きる屍』の一種である骸骨は、生者を見つけると獰猛に襲いかかり八つ裂きにしてしまう性質を持つ。生きている者を仲間に引き込みたいのか、それとも相手を殺せば自分に命が戻ると考えているのかは研究中だが、発見したらすぐに討伐しなければならない危険な存在だった。 そして、騎士の少女はその骸骨に見覚えがあった。 (こいつ、3-1002地点にいた白骨死体……魔物の気配なんてなかったのに。まさか、死体のフリをして私をやり過ごして、ずっと尾行してきてた……の?) 知性はほぼ無いと思われていた骸骨の、妙に戦術的な動きが意外だった。死んだフリや尾行を行うという報告は例がない。 (私の隙を狙っていたってわけね……) 索敵魔法が未熟だったのか、それとも相手の魔物の擬態が巧みなのか分かる者はこの場にいない。しかし、少女の魔法騎士としての名誉のために付け加えておくなら、白骨死体の演技をしている骸骨の正体を見破るのは難しい。 (相手は生者を殺すためだけに動く魔物、ここで退治するしかない!) 尻からは力むたびに汚物が漏れ続けており、集中力が掻き乱される。茶色い染みが広がって異臭を放つタイツに、腹部が汚物に塗れて腰部は装甲無しの白銀の鎧という不名誉な格好だが、戦闘はもう避けられない。 (こいつの退治方法は、動けなくなるまで粉々に破壊すること。注意するべき点は、腕や首を切り飛ばしたぐらいでは動き続けるタフさ。普通の剣の打撃では効果は薄い。弱点は光の魔法剣……) 魔物の知識は数百種類のものが座学で叩き込まれている。騎士の少女は剣を拾い上げてすらりと抜き、光魔法で表面をコーティングしながら骸骨に対峙した。比較的珍しい魔物なので実戦経験はないが、ただ叩き潰せば良いだけの相手である。少女の技量ならば負ける相手ではない。 そのとき、腹の奥で魚類が暴れているような水音が聞こえてきた。治まりかけていた腹痛がまたしてもぶり返し、もう大便の態ですらない食物と腸汁の混合物が少女の肛門に向けて押し寄せてくる。タイツの中にびしゃびしゃと新しい汚物が漏れ出てしまい、太ももから伝い落ちるや新鮮な異臭を放つ。 (……お腹が痛い……ものすごく痛い……何なの、これ……) 魔法剣の光が少しずつ拡散し始め、骸骨を牽制して向けた剣先がぶるぶると震え始める。騎士の状態は全て剣に現れる。少女の消耗を示すかのような剣の姿を見れば、どちらが劣勢なのかは明らかだった。 「くっ、これぐらいでお前などに負けはしない! かかってきなさい!」 騎士の少女は内心焦りながらも己を鼓舞するように叫び、骸骨は獲物の生者に両手を突き出して突進し始めた。相手は既に死んでいるが故に、相手の命を奪いに来る妄執の塊のような存在である。それゆえ単調。真正面からぶつかってくるのを迎え撃ち、一撃で仕留められる動きを頭の中でイメージする。 「うっ、ぐうっ! うう!」 しかし、イメージ通りに動こうと騎士の少女が剣の柄を強く握り締めた瞬間、これまでにない激痛が下腹部中に広がり、皮が剥ける感覚と共に血便が尻から噴き出していた。どろどろした未消化の食物と血の塊、そして腸粘膜が見えない部分で下着とタイツを汚していく。それは、体調の異変が只の腹痛ではないことを如実に示していたが、もう逃げることはできなかった。 「う、ううぅ、うう!」 左右に振れる剣先を必死に整えようとする騎士の少女。そして彼女を八つ裂きにしようと骸骨は大きな顎を開き、歯を打ち鳴らしながら飛びかかる。一片の慈悲の心も無い動きは迷いも躊躇もなく、獲物を殺すために特化した速さだった。
『とある少女騎士の話2』 ■『とある少女騎士の話2』 リクエストを受けました。少女騎士が洞窟内で猛烈な下痢に襲われ、同時に魔物にも襲われます。 大ピンチの少女騎士は危機を乗り越え、洞窟から生還できるのでしょうか? 完結済。 1 2 3 4 5
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