骸骨は少女騎士の変調を見透かすように正面から突撃してくる。カチカチカチカチ、歯が噛み合う音を空っぽの頭蓋骨に響かせ、敵の魔法剣など微塵も恐れず、闇を掻くように手を前に伸ばしてくる。目的に迷いはない。少女騎士を掴まえて血の通う柔肉を引き裂き、内臓を潰して骨を砕き、抵抗できる心身が沈黙するまで蹂躙するのみ。生者の世界にいる彼女を自分の側に引きずり込むのが目的なのだから。 (くっ、うぐっ……ふうっ、ぐううっ、ま、また……痛っ、痛い、痛い……) 血便が混じる汚物が尻に圧迫され、タイツに広がる染みから便汁が滲み出る中、少女騎士は決着の一瞬に全神経を集中させようとしていた。しかし、腹部を襲う地獄の痛みが酷くなり、放屁の音が尻から漏れ、タイツの中に新しい糞便が流れ落ちる度に、集中力は削がれて霧散していく。 相手は理性も知性も持ち合わせないはずの下等な魔物とはいえ、普通の人間では太刀打ちできない怪力を持っている。そのそも人間と魔物は対等の存在ではない。数でこそ人間が勝っているが、魔物は人間を狩り、陵辱し、喰らう存在なのだ。あの骸骨も、能力的には人間よりは優れている部分が多い。 だからこそ、彼らの脅威に対抗するため、王宮女神騎士団は厳しい修行を重ねてきたのである。魔物たちとの力の差を埋めるために。大切な人々を魔物から守るために。そして、魔物に打ち勝つために。 (お願い、お腹痛いの治まって……あいつを倒すまででいいから……) 恥辱に塗れた騎士の少女を支えるのは、愛すべき人々の元に生きて帰るという切実な願いだった。騎士団の仲間の顔、忠誠を誓う姫の顔、そして両親や友人の顔が思い浮かんでは消えていく。 「わ、私は……こんなとこで、うぐっ、死ぬわけには、いかないっ!」 腹痛で精神集中を掻き乱され、展開する魔法の効果が薄れていく。魔法剣の減衰は激しく、肉体強化の効果も薄れて甲冑が重く感じる。このまま相手の攻撃を迎え撃つのは得策ではないかも、と疑念が生まれた。 「この生ける亡者め……! 王宮女神騎士団の名において……お前を地獄に送り返してやる!」 攻めに転じる決断は一瞬だった。光が弱まりつつある魔法剣を握り直し、騎士の少女は精彩を欠く動きで骸骨に斬りかかる。しかし、震える足が泥を弱々しく蹴って走り出した瞬間に爆弾は破裂した。腸が渦巻く音を鳴らして未曾有の圧迫感を腹部に生み、腹痛を無視する少女を嘲るような激流が一気に緩んだ肛門を決壊させ、穴を裂く勢いで大量の汚物が雪崩れ出たのだ。 「ひ、いやああああああ――っ!」 肛門が火を噴いたと錯覚する激痛に、騎士の少女は悲鳴を上げて仰け反った。瀧が流れ落ちる光景を強制的に想像させられる。不幸が重なるように、慌てて履き直した防刃のタイツがヒザまで落ち、糞便色に染まる下着も太股まで下がり、汚物塗れの衣装に縛られる形で汚れた下半身が露になった。 小ぶりな尻が悲鳴のようにガスを出し、女性器からは小水が綺麗なアーチを描いて漏れ出し、悲鳴と嗚咽が少女の喉を破るように響き渡った。 「……あ……ああ……うあ……」 崩壊という二文字が頭に浮かんだが、もう意味を考えている時間も残されていない。骸骨は動けなくなった少女に飛びかかる。騎士の少女は効果の消えかかった光の魔法剣を握り直し、最後の力を込めて振り下ろした。 バキン! 闇の精霊に強化されて鋼鉄の硬度になった骸骨が、魔法剣に砕かれる。胸から上の部分を剣で切り飛ばされ、衝撃で肋骨部分も全て砕けた。下半身に背骨が一本だけ残る奇妙な姿になった魔物は、先程までの勢いが嘘のように、そのまま力無く崩れ落ちて動かなくなる。それだけ見ると、あまりにあっけないとしか言いようがなかった。 (勝った……) ボロボロの姿になった騎士の少女は、ようやく精神の緊張を緩めることができた。凶暴とはいえ下等な魔物である。日ごろの訓練が勝敗を分けたということだろうと自賛して、自分に余裕ができたことを自覚する。 急いで足の甲冑を外し、糞便塗れのタイツと下着を脱ぐことにした。後は荷物の中にある薬草を飲み、下半身に付いた汚物を軽く拭って洞窟から脱出し、川で下半身を洗い、服の代わりを調達しないといけない。 「かなり大変そう……」 思ったよりすることが多くて暗澹たる気持ちになる少女だった。 「とりあえず薬草を、いや、毒消しが先か……」 剣を壁に立てかけて、汚れた下着とタイツを横に置いた。上半身には汚物で濡れた白銀の甲冑を付けたまま、下半身はすらりと長い足と綺麗な形の女性器を露にし、少女は荷物の方にひたひたと歩いていく。もし糞便で汚れていなければ、少女の下半身のラインの美しさに多くの男が生唾を飲み込んだだろう。
騎士の少女は忘れていた。骸骨の退治は動けなくなるまで粉々に破壊する必要があることを。腕や首を切り飛ばしたぐらいでは動き続けることを。そして、あの骸骨は、死んだフリができることを。
「きゃあああああああっ!」 両足の腱を切り裂かれ、為す術無く倒れた少女騎士の視界に飛び込んだのは、骸骨の上半身が壁に立てた剣を獰猛に振り回す光景だった。剣の刃には少女の血がどろりと張り付き、切り裂かれた足の傷からは鮮血が溢れ出して止まらない。力を入れても立つことはできなかった。 「し……しまった……まだ動けたなんて……あ、足が……」 這いずり寄る骸骨の上半身の背後では、骸骨の下半身が背骨を一本残した姿のまま立ち上がり、やはり近づいてくる。暗闇に浮かび上がる少し曲がった背骨は生前の人間の姿を想像させた。少女より遥かに大きい体格の持ち主。右肩に重い荷物を背負うことが多かったのか、僅かに右側に反れている。 「い、いやあああ! ウソでしょ!?」 初めて少女騎士は骸骨に対して恐怖を覚えた。背骨だけになって自分に迫る存在を理解することができない。しかし、骸骨の剣が少女の足に突き刺さると、その感情も激痛に弾け飛ぶ。 「うぐうあああっ! ぎゃああああああ!」 獲物が逃げないように、まずは足を完全に殺すつもりなのだと少女は確信した。この骸骨にはそれだけの知性が存在している。 「いやああっ! こっちに来ないで! 来ないでええええ!」 少女騎士は骸骨と同じ姿勢で這いずり、指先で泥を掻き分けて無様に逃げ始めた。やはり立つことはできない。重い甲冑を着込んだ身体を少しでも骸骨から遠ざけようと、指先に力を込めて泥を掻く。ガリガリと泥も石も岩も関係なく掻いた。爪が剥がれて指から血が流れたが、もう逃げる以外に少女騎士に助かる術はなかった。 しかし、這うのと二足歩行では当然後者が速い。骸骨の上半身から逃れようと、汚物を垂れ流した尻を剥き出しにし、腰を左右に振って地を這う少女騎士に、背骨を生やした下半身が悠然と歩いて近づいていく。 「うあああ! あ、あああっ! や、止めて……止めて……ああっ!」 骸骨に尻を踏み付けられ、少女騎士は泥と汗と涙で汚した顔を歪めて仰け反った。地を這う者とそれを足蹴にする者、場の勝者がどちらかは言うまでもない。完全に狩られる側になった少女から嗚咽が漏れた。 (駄目だわ……逃げられない……とても逃げられない……) 骸骨の足がゆっくりと少女騎士の前に歩いていく。先には少女騎士が漏らした山盛りの大便があった。足先で泥と汚物を捏ね回すと、粘土のようになった糞が骨にこびり付き、新鮮な汚物特有の強い異臭を放つ。 「……それだけは許して……お願い……うぐっ、ぐうう!?」 追いついてきた骸骨の剣が、甲冑も防刃タイツも無い剥き出しの足に次々と振り下ろされた。ふくらはぎに刃先を突き立てられ、ヒザを刃で縦に裂かれ、太股を裏側から横に裂かれ、筋を切られて骨を断たれていく。しかし、自分の足が切り刻まれて感覚が消えていくのに、少女騎士は悲鳴も上げられない。 「うぐぐぐ、うぶぶぶ、ぐぶ、ぐうう……」 涙を流す騎士の少女の口には、自分の大便に塗れた骸骨の足先が捻じ込まれていた。骸骨が口内を足で弄くるたびに綺麗な顔が歪み、糞で汚れた鼻や頬が変形し、歯が音を立てて折られ、涎と血が唇の隙間から溢れ出る。 仕える姫以外とはキスの経験も無い口に足先や糞を入れられる恥辱、魔物に好きなように弄ばれる屈辱、そして歯を折られていく激痛に、少女騎士の戦意と誇りは音を立てて砕かれていく。 「ううう、ぐうう、う、うう、う……!」 (助けて……誰か……) 足先が口から引き抜かれると、汚物の化粧を施された唇から、血と歯の破片がどろりと流れ出した。しかし、骸骨は休むことなく騎士の少女の美顔に糞を擦り込み、足先を使って口に押し込む。 泥と糞を塗りつけられた顔が悲痛に歪んだ。汚物を無理矢理食べさせられて人間としての尊厳まで否定され、弱った少女騎士の心は更に追い詰められていく。苦しめることが目的の責めに、どこまでも耐えられるはずはない。 (助けて……こんなの、いや……) 下半身では骸骨が完全に死んだ少女騎士の両足をこじ開け、純潔を守り続けた性器に手を伸ばしていた。骸骨が相手である以上、通常の陵辱はあり得ない。おそらく、破壊を伴う殺すための陵辱になるだろう。 (これ以上の辱めを受けるなら、いっそのこと……) 前後から骸骨に責め立てられる少女騎士は、ここでようやく、歯が無ければ舌を噛めないことに気付かされた。 (まさか、そんな……私は死ぬこともできないの……!?) 心に絶望が何重にも上塗りされ、顔への汚物責めや、これからの陵辱に耐えようとする心までが崩れ落ちていくのを感じた。死を覚悟してから自決の選択肢を否定されたことは、相当のダメージとなって少女の精神に返ってきた。 (いやああああああっ! いやああああああああっ!) 骸骨たちは少女騎士の心と身体を両面から責め立て、残酷な方法で確実に精神と生命を削り取っていく。今や獲物に転落した少女騎士にできることは、与えられる拷問に苦しみ、泣き叫び、抵抗できずに嬲り殺されていく、ただそれだけだった。
『とある少女騎士の話2』 1 2 3 4 5
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