小さい頃から、お父さんに頭を撫ぜられるのがとても好きだった。 あの大きくて、とても力強くて、けれど優しい。あの手が髪に触れるたびに私は、心の中がぽかぽかと暖かくなる。
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麻帆良学園都市には何でもある。 これは比喩でも誇張でもない、レッキとした事実だったりするんだけれど、どうもこの話は学園都市に住んでいない人には通用しなかったりするんだよね。複合学術何とかかんとか総合都市のモデルとして……まあとにかくすごくて、数年後には社会科の教科書にも載っちゃうってぐらいの都市プロジェクトをやってるのが麻帆良らしいの。 もんたさんの後の昼のワイドショーとか見てるとさ、駅前開発反対とか言ってお上と地域の人がぎゃーぎゃーやってるニュースとかあるけど、ここじゃ何もなし。一年間でこの街がどれだけ開発されて変わっていってるか知ったら、あの人たち腰抜かすと思う。もうどんどん新しい物が造られていく。反対する人は誰もいない。ていうか、皆無。それってすごいよね? でも、そんな麻帆良にも、どーしても解決できないことがあったりするんだにゃー……これが。 1つは「刺激」。どうしてもマンネリしちゃうっていうか、平和すぎるっていうか、毒がないっていうか……。休日は柿崎たちみたいに渋谷とかに出ていく人が多い。私も部活がない日はそうしたいんだけど、お父さんがあんまり良い顔しなくて正直行きにくいんだよね。お父さんには弱いんだ、私って。 あ、お父さんっていっても、私はファザコンなんかじゃないからね! 確かに、今でも、チャンスがあればお父さんといっしょにお風呂入ってたりするけど、それはお父さんがとってもいっしょに入りたそうな目で私を見るから、私は仕方なくいっしょに入ってるだけで、私はファザコンなんかじゃないよ。違う違う。 ともかく、私はファザコンじゃないから。これってよく誤解されるんだけどね。 で、この街の問題、もう1つはね……満員電車だったりする。
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今朝は亜子たちは部活の朝練なので、裕奈は1人で駅のプラットホームを歩いていた。時間はまだ余裕がある。 「電車、今日も混んでそうだにゃー……うしし、これなら、いける」 裕奈は背徳と興奮で頬を赤めながら、いつもようにエスカレーターを駆け下りて、その先にある女子トイレに駆け込んだ。個室は5つで、そのうち1つは誰かが入っていた。裕奈は横に誰もいない一番奥の個室に入る。そしてトイレットペーパーをからからと引き出して千切り、便座を軽く拭う。別に大便が付いているとは思わないが、清潔だとも思えない。 水が流れる音が聞こえてきた。誰かさんが出ていったらしい。 「ふう……」 排尿する開放感に包まれながら、裕奈は軽く息を吐いた。水を流す音に隠される、尿の零れ落ちる音。 (ここからが本番なんだよね……) ペーパーで秘所を軽く拭った裕奈は、目をぎらぎらと輝かせながら、履いていたパンツをそのままカバンの中に入れる。そして、代わりに通販で買った大きなバイブを取り出した。黒光りする表皮についた凶悪なイボイボのオプション、そのイボイボとサイズを試すのは今日が初めてである。裕奈はマタタビを得た猫のようにうっとりと微笑む。 携帯用シャンプーの容器に入れて持ってきたローションをとろとろとバイブに塗り、呼吸を整え、己の膣内にゆっくりと挿入していく。 「う、ふうう……ん!」 裕奈の性器がずぶずぶとバイブを咥え込む。下腹部が痺れるような感覚が広がっていき、白い壁に映った裕奈の影は大きく揺れた。水を流す音を重ねて誤魔化すが、イボイボの刺激にどうしても声が漏れる。 「こ、これって……いくら何でも、無理かにゃ……」 これまでの小さなものに満足できなくなっての冒険だったが、少しレベルが高すぎるダンジョンに挑戦した気分である。裕奈にその刺激は強すぎるように思えた。 「で、でも……やって、みたいし……そっちの方が我慢できないもんね」
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学生があまり使わない満員の電車を選ぶ。裕奈はぎこちない歩き方で乗客の列に並んでいた。 スカートが隠しているのは下着も付けず、極太のバイブが突き刺さった股間。 (バレるかもしれない……引き返すなら、今しかない……バレたら、どうなっちゃうんだろう……だめ……でも、止められないもん) まき絵たちがいない日など、滅多にあるものではない。この快楽に目覚めてしまった裕奈が、どれほどこの日を待ち望んでいたことか。昨日は興奮しすぎて眠れなかったほどだ。 裕奈が風邪をひいて寝込んでいた時、父親に見つめられながら、布団の中で股間を弄ったことがあった。 その背徳と羞恥と快楽が忘れられず、ついに裕奈は電車の中で、隠れて破廉恥な行為をするようになったのである。 (もう、戻れないにゃ……) 下半身の疼き、そして羞恥と周囲にバレるという恐怖。裕奈はその快楽の毒に酔いながら、満員電車にゆっくりと乗り込んだ。それが破滅への道になるとも知らずに。
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通勤ラッシュのピークであるこの時間はまさに天国と地獄である。 シートに座ることができた者は読書に耽るなり目的地まで居眠りするなり、それなりに快適な通勤(通学)時間を過ごすことができる。一方、立ち続けている者は高温多湿かつ閉塞したスペースに押し込まれた状態で、何もしなくても疲れていく状態にある。 しかし、そんな地獄側にいるのにも関わらず、一人天国に昇りつめようとしている少女の姿があった。 (まずい……こ、こんなことになるなら、止めとけば良かった……もう、足が、がくがくして……!) 「っく……ふう……うう……ぁ、ぁあ……は、ぁあ……ぁは……ああ」 バイブを股間に突き刺したまま満員電車に乗り込んだ裕奈の表情は、今や後悔の色ばかりが目立っている。電車の楽しみである吊り広告を見上げる瞳は恥辱に歪み、喘ぎ声を漏らすまいと緊張した唇はからからに乾いている。 周りの人間はみんな数十センチ以上背が高い男性で、裕奈の華奢な身体は彼らに押し潰されているように埋もれていた。それどころか、彼らの手が隙を見ては裕奈の身体に伸びてくるのである。集団痴漢に囲まれていると気付いた時には、裕奈は既に彼らに絡めとられていた。 (何が楽しいのよ……こんな、ことして……) 音もなく近づいてくる手が、スカート越しに裕奈の尻をなぜ回してきた。もし大声を上げたら、自分が痴女的な行動をしているのもいっしょに露見するだろう。そうなれば、痴漢たちを鉄道警察に引き渡しても、裕奈自身もただでは済まない。いや、明石教授の立場がただではすまない。裕奈は何とか逃れようとしたが時は既に遅く、下着なしでバイブを刺していることが彼らにばれてしまった。抵抗もろくに許されず、逃げ場のない電車の中で彼らに弄ばれるままになるしかない。 (は、早く……早く駅に着いて……このままじゃ、本当に、電車の中でイかされちゃうよ……) 刺していたバイブは痴漢たちに掴まれていて、今もゆっくりと裕奈の肉唇を上下している。 慣れてないどころか使うのさえ初めてのイボイボが、膣壁を甘く擦りつつ愛液の海を動く。刺激はすぐに快感に変わり、背中や胸という性感帯を起こして熱を与えながら、頭に芯まで駆け上がる。お小遣いをこつこつ貯めて買ったバイブが値段相応の働きをしていることが、皮肉にも裕奈を追い詰めていた。 (まき絵、亜子、アキラ……助けて……誰か……誰でもいいから……) しかし自分のしている淫行を考えると、実際に助けてくれと訴えることもできない。痴漢たちの手はそんな裕奈の身体を好き勝手に弄る。引き締まった尻の肉の感触を楽しむ手や、制服越しに乳房を揉み潰してくる手から、裕奈は必死に意識を切り離そうとする。 (こんなの、いやぁ……! お父さん、助けて……!) やはり、思い浮かぶのは大好きな父親の顔だ。自分の乳房や尻や女性器を性的な欲望の慰み物にされることに、裕奈の中で嫌悪感が爆発した。自慰で弄る分にはかまわないし、恋人に触らせるのもいい。しかし、顔も分からない変質者たちにいいように玩具にされることは我慢ならない。キレイだった自分の身体が汚されていくイメージが、裕奈の頭の中ではち切れんばかりに広がり続ける。もはや裕奈にできることは、もうすぐ到着する駅まで我慢するしかないのだった。 (……ああ、私、バカだ……こんなバカなことしたからっ! でも、もうすぐ解放される……! もうちょっとで……)
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それは時間にして、裕奈が電車から降りて数十分が経過したころだった。 「あれ? 裕奈どしてんやろ? 今日、学校に来れへんて……」 裕奈の携帯からメールを受け取った亜子は首をひねった。メールには今日学校に行かないと書かれているだけで、その理由がないのである。さすがに不自然なメールであることは否定できない。 「せっかく、1時間目が自習になったのになあ……ほんんま、山田オルタナティブのおかげで」 どういう意味かも知らないその単語を呟きながら、亜子は爽やかな笑顔で大騒ぎしている3Aの中に戻っていく。黒板には大きな「自習」の文字。 現在、緊急職員会議が開かれている最中である。
『裕奈-ENDLESS DAY』 前編 後編
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