薬座!
少女戦士が痛めつけられ、陵辱、捕食、グロ拷問されるリョナ小説。
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『救世主ミリルのお仕事』 2-6「殺戮の種」

10:38。東都西大学_東連館(東サークル棟)

 空気は喚起されておらず、異臭を誤魔化す妙な香の匂いが部屋中に満ちていた。
「サタン(悪の権化)が世を襲いしとき、メシア(救世主)が現れて光を与えん」
 たこ部屋のような空間に押し込まれた男女が、壁にかけられた神祖の写真を前に跪いて呪文を唱えている。恐怖と畏敬の表情を浮かべながら彼らは一心不乱に祈り続ける。自分たちの崇める神にお金を貢ぎ、救いを得るために。
 この集団は、宗教団体『統勝全教会』の東都西大学でのダミーサークル『大学助け合いギルド』。当然のことながら大学非公認であり、学祭などの案内パンフレットに記載されていない。


 宗教団体のダミーサークルと聞いて、ぴんとこない人もいるかもしれない。
 大学にはカルト宗教団体がサークル活動を装って学生を勧誘し、洗脳して信者にしてしまうケースが多々ある。一番狙われるのは入学したばかりの大学一年生であり、知り合いがおらず孤独と不安に悩まされてる獲物に優しく声をかけ、サークルへの参加を促していく(そのため、宗教のダミーサークルは友達を増やることを目的に設定されていることが多い)。
 宗教に毒されて社会から逸脱したり金銭を搾り取られる学生も多い。神学部がある大学では学部生と宗教サークルの論争、および闘争が続いているのが現状である。
「私たちに光を分け与えてくれる。私たちに光を分け与えてくれる……」
 お布施として財産を絞られ、合法ギリギリの幻覚剤を打たれた男女は、思考も停止し、親族とも絶縁し、もうこの場でしか居場所がない状態に追い込まれていた。
 大学から追われたとき、自分たちがどうなるのか、それすら思考する余裕が無いし、意図的に逃避している面もある。


 その停滞した空間の扉が乱暴に開かれた。
 全員が虚ろな目をして侵入者を観察する。
 小学生ぐらいの麦藁帽子を被った少女。白いブラウスに赤いスカートを履き、外見はまるで日曜のアニメの女の子のよう。
 麦藁の陰に隠れた丸い眼からは、泉が湧くように大粒の涙が流れ落ちた。


「私が貴方たちを救ってあげる。邪神に惑う哀れな子羊たち――」


 澄んだ声が紡いだ静かな言葉は、宗教団体への宣戦布告。
 男たちが次々と立ち上がり、侵入してきた少女を捕まえようとする。
 女性や一部の男性は不安げに眺め、少女が乱暴なことをされるのではないか心配する者もいた。
「おい、どこから入ってきた!」
「ここは立ち入り禁止の場所だぞ!」
 少女を部屋の外に摘み出そうと、男たちの手が少女に伸びる。
 しかし、彼らの手が少女に届くより先に、少女の涙が気化した。
 涙の分子が相転移して爆発的に膨張し、部屋中の澱んだ空気を外に押し出し、気圧を一変され、壁や窓ガラスに大量に結露して流れ落ちた。
 部屋が涙を流しているかのように、天井から、壁から、窓から、少女の涙が流れ落ちた。
 聖母の像が血を流すように、神の代弁者が血を流すように。
 異様な湿度に包まれた部屋中から少女の涙が流れ落ちた。まるで少女の眼球の内部にいるかのように。少女の涙はガスと化し、部屋中に広がった。
 微笑む少女の姿は、カルト構成員たちの網膜に焼き付いた。
「何なんだ、この餓鬼……」
「頭が、ぼぉーっとする……」
「た……助けて……誰か……」
 涙のガスで満ちた部屋の中で、カルト信者たちは悶え苦しみながら意識を失っていった。
 凄惨な光景を目の当たりにした少女は、麦藁帽子を脱いで彼らの様子をじっと眺め、そして、
「えへへ」
 まるで天使のように無垢で、あどけない微笑みを浮かべた。


10:40。東都西大学_東連館(東サークル棟)

 ぺた、ぺた、ぺた、と油絵の具の粘りつく音が響く。
 濃淡のある緑色が幾重にも塗り重ねられ、風に揺れる森を創り出していく。筆の動きに迷いは無く、絵の上を筆が踊るたびに二次元の世界に奥行きが増し、雄大な風景を紡ぎだす。
 東都西大学の美術同好会に所属する谷川瑞希は、普段と同じように室内で大学祭に飾る絵を描いていた。学際で絵を飾る組織はイラストや会報誌を売る漫画研究会とアニメーション研究会を除けば、美術同好会だけである。
「うーん、この色は少し濃すぎる。もう少し優しい色が良いけど、絵にしてみると上手くいかないか」
パレットの絵の具を筆先で捏ね回しながら、瑞希は顔を少しだけ強張らせる。
「もう少し赤い、もう少し黄い、もう少し青い」
 絵の中の森海は色を塗り重ねる度に生々しさを増し、絵よりも写真に近づいていく。
 同好会の仲間から恐れられる色彩判別能力を持つ瑞希は、より精巧に、より実物に近く絵を描く。絵の世界では本物に近ければ優れているということはないが、瑞希のスタイルはより現実の在り方を追求するものだった。
「うーん、上手くいかない。もう少し青いか」
 修正に修正を重ね、まるで葉の一枚まで描くように筆を走らせる。
(だけど、そろそろ妥協した方がいいか)
 芸術への情熱と相反する諦めの表情で、静かに筆を置く。今の技術ではとても自分の理想を表現することはできない。すっと細められた瑞希の眼球には毛細血管の模様に混じり、識別不能の文字列がびっしりと眼球の裏側まで浮き上がって絵の色を細分化する。
 絵の中に存在する濃淡のある『緑』を、淡から濃まで十万近い『別の色』として捉える。
 それが瑞希の生まれつきの体質だった。
「もう少し赤いか」
 瑞希は自分が美人かどうかも分からない。鏡に映る自分の顔は数億色の違う色で構成されたモザイクで、形は識別できても美しいか理解できない。周りにいる人間も色の塊に過ぎない。母親も同じ体質だったが、彼女が物心ついたときには既に発狂していた。瑞希が狂わなかったのは、体質に上手く適合することができただけの話だ。
 しかし、そんな瑞希でも、雄大な自然の景色は美しく想う。色彩を細別でき過ぎるが故に常人では理解できない美しさが理解できる。その感動だけが瑞希を狂わせずにここまで生きさせた。
(た……助けて……誰か……)
「……何か聞こえたか?」
 一瞬、ドタンバタンという物音と微かな悲鳴が聞こえたような気がした。斜め上の部屋にいる何とかいうカルト団体かもしれない、と瑞希は思った。喧嘩でも起きたのかも知れないが別に問題は無い。
 人間を遥かに上回る能力を持つ瑞希にとって、一般人の宗教中毒者が数十人同時に襲ってきても脅威にはならない。本気になれば数秒で皆殺しにできるぐらいの戦闘力がある。
(もっとも、『同類』に襲われたら分からないけど……それでも返り討ちにできるかな)
 最も、瑞希は争いごとを好まない。色彩が異常に鮮明な毒々しい世界で、ささやかに一生を送るのが瑞希の夢なのだ。自分の能力を生かして、とある国家機関のアルバイトのようなことをしているが、飯を食べていくために仕方なくやっているだけだ。
 その異能者は周りに誰にも秘密を悟られること無く、ひっそりと日常に溶け込んでいた。


11:16。東都西大学_工学部掲示板前広場

「ここが東都西大学ですか。どれも古い建物です」
 山咲美恵は私立『皇線学園』に通う高校一年生である。長い髪に四角い眼鏡をかけたガリ勉風の容姿で、化粧も最小限しか施されていない。
 今日は創立記念日の休日を利用して第一志望の東都西大学に遊びに来た。
「流石、大学は色々な人がいるものですね」
 通り過ぎていく人間の幅も広い。固そうな人間から柔らかそうな人間まで多種多様で、見て新鮮な気持ちになる。高校と大学の根本的な違いだろう。
「あら、子供みたいな人まで。あ、いけない。外見で人を判断するなんて」
 向こうのベンチに座っている茶髪の少女は自分より年下に思える。もっとも、大人のように大きい子供がいるのだから、子供のように小さい大人がいても不思議ではない。
 美恵は視線を別の看板に合わせた。
「ん? 何だかさくらさんが喜びそうな研究会です」
 綺麗なアニメキャラのイラストが描かれたアニメーション研究会の看板をしげしげと見つめる。横には美術同好会の看板もあるが、こちらは文字の情報だけで質素なものだ。
 知り合いの国城さくらは美恵の1つ後輩で、学園近くの八百屋の娘である。今は皇線学園を目指して猛勉強をしているはず。二次元のキャラへの愛情がやや過ぎているが、それ以外は別に問題も無い。ちなみに国城さくらはアニメより漫画が好みだが、アニメ番組の視聴を「マンガを見る」と表現する美恵にはどちらでも同じだった。
「さて、カフェでご飯でも食べて……あら?」
 美恵はふと歩を止めた。
 大学の職員らしき女性と、親子だろうか、麦藁帽子を被った幼い少女が歩いてくる。
 2人は仲良さげに手を繋ぎながら、白い直方体の建物に入っていった。建物紹介の看板には『高分子化学棟』と書かれている。たぶんビニールのことですね、と美恵は思った。
「迷子か何かでしょうか? 笑っているように見えましたが、それにしては……」
 美恵は小さな少女の方が妙に気になっていた。少女は楽しそうに微笑みながら、麦藁帽子の影に隠れた目からは涙をボロボロと流していたように見えたのだ。しかし、気のせいだとすぐに思い直してカフェを目指す。あれだけ平静な様子で笑みを浮かべながら、涙を流し続けている少女がいるとすれば、それは普通ではない。
(『変身』できるようになってからの悪い癖ですね。変わった人がいたら意識してしまいます)
 『正義の味方』の変身できる異能者である美恵は、麦藁帽子の少女を意識から追い出した。
 彼女は世界中の花を守るという花の妖精の説明を受け、『花の騎士エルドル』に変身して悪の権化『クラドスボリーム』と戦う魔法戦士となることを快諾したところである。
 今のところ、仲間は自分を入れて3人。来年、さくらが皇線学園に来たら声をかけてみようと密かに思っている。


11:17。東都西大学_工学部掲示板前広場

 大学職員の女性と麦藁帽子の少女が、四角い眼鏡をかけた女子高生とすれ違うのを、少し離れたベンチに腰かけて観察する1人の少女がいた。髪は茶髪のセミロング、外見は大学生というには若い。
「洋子、また何か悪巧みをしているのね。空気が微かに震えているわ」
「あら、無限ちゃん。貴女も来ていたの」
 黄金仮面の部下となった永山洋子は、数センチの毛の塊として浮遊している無限を確認して、目をすっと細めた。
「貴女と同じく、愉しい学校というものに憧れてきたのよ」
「無限ちゃんは、いつからそんな意地悪を言うようになったのかな」
 洋子はバナナ味のパックジュースを音を立てて啜る。
 周りにいる者はみんな自分の目的を持って歩いているようで、小声でぼそぼそ何かを話している洋子や、彼女の近くに浮いている数センチのゴミのような物体など気付いてもいない。
 くすくすくす、と無限の嗤う気配が周囲に広がる。
「成程、この大学には洋子の好きそうな爆弾が蠢いているようね」
「導火線は一本だけどね」
「連鎖的に秩序が崩壊するカタストロフの鍵」
「崩れる前のドミノ」
「下手すればこの大学は壊滅するかも」
「するかもじゃない。させるのよ」
「貴女ほど学校を憎む人は珍しいわ」
 洋子は目に暗い光を宿しながら、にやりと嗤った。そこには大きな人形をボコボコにして引き裂いている子供のような、あどけない破壊衝動が燻ぶっている。
「貴女は恐ろしい子だわ、洋子」
 無限は感心するように呟いた。
「争いを招き秩序を破壊するテロリスト。だけど貴女の内側に後の世界は存在しない。あるのは暗黒を彷徨うばかりの破壊欲だけ」
「私は魔王の尖兵だもの。黄金仮面様という魔王の手にして足」
「A市の事件で1600人もの人間を殺したのは貴女。黄金仮面様の意思ではないわ」
「…………うふふ」
 洋子はジュースのパックをぐしゃりと握り締め、ストローを噛んだ。
 あどけなさは微塵も無く、ただ憎悪と破壊欲が空の心に黒色の靄を詰め込んでいる。
「厳しいことを言うわね、無限ちゃん。私はあのA市で30人しか殺していない。しかも、それって何年も前の話だし」
「ご両親を数え忘れているわ」
「とにかく、1600人なんて大虐殺に覚えが無いわ。なんて恐ろしいことを言うの」
 とぼけやがって、と無限の口が嗤いに歪む。
「貴女は直接殺したわけではない。その代わり、貴女がA市で流していた『怪人の噂』が1600人近い犠牲者を生み出した。危険情報流布防止の目的でJCIAに粛清されたのよ」
「そんなの私のせいじゃないし」
「拡散すればJCIAに殺されると分かっていた情報を広めたのは、疫病を広めるのといっしょ。今や、A市の『黄金仮面とナイトガールズ』の物語は、携帯やインターネットを媒体に感染する死の呪いに置き換わった。もう原型を留めていない」
「着信を貰えば殺されるって? 黄金仮面様の好きそうな映画であったね」
「危険な情報を『噂』に含めて意図的に流したのは洋子。結果としてA市の事件にJCIAの介入を招き、『噂』の発信者は根こそぎ消された。貴女の悪意に満ちた『怪人の噂』が、日本全国での大量虐殺を引き起こした」
「何が一番マズかったんだろ? 魔法の国? コミンテルン? それとも――」
「本当のこと全部よ」
「だって本当のことじゃない」
「本当のことだからいけないのよ」
「ええ?」
 おどけた様子の洋子に、無限は軽く溜息を付いた。
「貴女はテロリスト。闇に隠れた爆弾で命を弄ぶ情報テロリスト――」
「で、何が言いたいの? 前置きはそれぐらいでいいでしょ?」
 洋子はパックジュースの箱をゴミ箱に投げ、無限に向けて微笑んだ。そこに敵意は感じられず、まるで友達と会話をしているかの風だ。
「この大学で魔法改造人間を争わせるのは、今回は避けた方が良い」
「ふぅん、どうして? 理由を聞かせてもらおうじゃない?」



『救世主ミリルのお仕事』 第2章 −花の騎士の誕生−
2-1「少女の願い」
2-2「花の騎士の誕生」
2-3「クラドスボリーム」
2-4「白濁の敗北」
2-5「芽吹く野望」
2-6「殺戮の種」(現在ページ)
2-7「滅びの花」

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*― ―) 暇人のSS書き。華麗に武装した少女戦士や魔法少女の敗北萌え、陵辱萌え、拷問萌え。好きなシチュは汚されてドロドロ、小さいものウジャウジャ、囲まれてボコボコ、動けない、脱出できない、終わらない。
 好きな作品は最近は学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド。お気に入りは、うみねこシリーズ、舞Himeシリーズ、ネギま!、セーラームーン、封神演義等。

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