「ここは魔物たちの棲む場所です。ぐずぐずしている暇はありません。すぐに出発しましょう」 王宮女神騎士団の団長が騎士たちの編成を頭の中で練りつつ、この場所を離れるべく指示を出し始めた。戦闘力が激減しているので、できる限り戦闘は避けたい。同じところに止まるのは魔物を呼び寄せるだけだと判断したのだ。 彼女は騎士団の中では最も実戦経験が多く、姫からは勿論、後輩からも信頼の厚い少女騎士である。隣国との戦闘では降伏せざるを得なかったが、彼女の指揮した王宮女神騎士団は常に最も多くの敵を倒し、最も被害が小さかった。 騎士たちは彼女の言う通りに隊列を組み始める。 (みんなで姫様を守り、ここから脱出するしかない!) 他の少女騎士たちも励まされ、僅かに生じた不安を拭い去ろうとする。 凶暴な気配はみるみる増殖しているが、彼女たちはまだ周囲の異変に気付けないでいた。例え王国の紋章を付けた王宮女神騎士団でも、魔物たちには格好の獲物でしかない。純潔を守り、清め、鍛えてきた肉体も、犯すための穴と喰らうための骨付き肉でしかないのである。 彼女たちの甘い体臭は森に広がり、臭覚の優れた魔物たちを引き寄せ、その魔物たちの動きが別の魔物たちを引き寄せる。大量の餌が現れたという一種の信号は、瞬く間に密林の中を駆け巡り、幾重にも包囲網が敷かれていたのだ。
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最初の犠牲になったのは、皮肉にも団長の少女騎士だった。 巨大な二本の牙が足元から飛び出してきた。先端は鋭く尖り、綺麗な曲線を描きながら地面に続いている二本の凶器。クワガタムシのような巨大なハサミが甲冑を易々と貫通して、一瞬で性器と肛門に深く突き刺さる。 異物の味を知らない粘膜を引き裂かれながらの破瓜に、純潔を保ち続けた少女の絶叫が迸った。 「きゃ……きゃああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」 常に冷静沈着でいた少女騎士は剣を取り落とし、激痛に錯乱して喉を破るような声を上げた。己の二穴を貫いている凶物を引き抜こうと、細い両手で必死に敵を握り締める。 しかし、性器から溢れ出る血液で手はぬるぬると滑り、力を入れることができない。 戦場では絶対に見せてはならないと後輩に教えた涙が流れ落ち、小さな唇からはただ絶叫が迸る。 「抜いてえええ! これ抜いてええええ!」 あまりの光景に周りが呆然となる中、男を知らない生殖器は巨大な凶器の侵攻を受け続けている。肉粘膜はクリトリスを右にして数倍に裂け切れ、膣道が濡れる間もなく削られて消滅した。 白銀の甲冑が音を立てて砕け、血が瀧のように足に流れ落ちていく。肛門も数倍に裂け広がり、腸膜が紙のように突き破られ、鎧の隙間から漏れ出した糞尿混じりの血液が男性の立ち小便のように飛び散った。 (嘘だ……あの強い団長が、こんな……) 一瞬の出来事だった。少女騎士たちの脳裏で、悲痛な叫びを上げる団長の姿が自分と被る。本能的に理解してしまった、ここでは自分たちは食われる立場なのだと。皆から尊敬を集めていたリーダーの悲愴な姿は、騎士団全体に大きな動揺をもたらした。 「てっ、敵襲! 敵襲よ!」 何人かが団長を助けようと動いたそのとき、森の中から次々と獣人や巨大な獣たちが飛び出して騎士団に襲い掛かってきた。騎士たちの数倍はいる魔物の群れである。四方八方から次々と襲いくる魔物たちに、王宮女神騎士団はパニック状態になりながら乱戦に突入した。 「姫様、早くこちらへ! この場から撤退します!」 少女騎士たちに守られて魔物の包囲の隙をつき、姫はいち早く戦場から脱出した。残る騎士たちは姫が安全な場所まで逃げるまで、魔物たちを食い止めなければならない。 「こいつら、すごい力よ! みんな、気をつけて! うぐううっ! くっ!」 「剣が効かない! そんな! は、離せ! 離せ! い、いやあああああ!」 「ま、魔法さえ使えればこんな奴ら……きゃああああっ!」 威勢の良い少女騎士たちの声は、すぐに悲鳴の嵐に変わる。この密林にいた魔物たちは、彼女たちが普段戦う魔物よりも遥かに狡猾で獰猛、そして強靭だった。 同じ動物でも野生とペットでは天と地ほどの差があるように、ここの魔物たちは攻撃、防御とも桁外れのものだった。装備した剣は魔物の皮膚に当たると折れ、魔物の爪は鎧を易々と破壊して少女たちの柔肌を切り裂いてくる。 修練に修練を重ねた魔法は使うことができず、厳しい修行で造り上げた肉体も魔物の力にはまるで歯が立たない。 「ああああああっ!」 「うぐっ、うあああ! いやあああああ!」 「ぎゃああああああああああ!」 腕を引き千切られて泣き叫びながら逃げ惑う者、生きたまま身体を裂かれていく者、鎧を剥ぎ取られて陵辱される者、顔や乳房から食われていく者、場は少女たちの処刑場と化していく。 少女騎士たちはこの森の魔物に対して、あまりにも無力だった。
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長剣が乾いた音を立てて砕け、回転しながら地面に鈍い音を立てて突き刺さる。磨き抜かれた刃に映し出される光景は、太陽を覆い隠す深く暗い森林と、鮮血で赤黒い海と化した腐葉土、そして散乱した鎧の破片と嬲り殺された少女騎士たちの残骸であった。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……いやだ……来るな……」 少女騎士の背中が背後の巨岩にぶつかり、退路は完全に遮断されてしまった。 魔除けの紋様を描きこんだ白銀の装甲も怪物たちの爪を受けるたびに悲鳴を上げて砕け散り、血や泥に塗れて光沢は見る影もない。 防刃の細工を施していたマントは裂かれて背中にだらしなく張り付き、最高品質の長剣も今や根元から折れて使い物にならない。最早、万策尽きていた。 「こんなところで……こんなところで、死ぬなんて……」 泥と血で塗れた髪を肩まで垂らし、憔悴した顔で少女は目の前の怪物たちを見上げた。 手足は疲労で石のように重く、過度の戦闘で肺腑が荒く酸素を貪る。鎧に覆われて全身が蒸せるように暑いが、死の恐怖による冷たい汗が滲み出る。
『とある少女騎士の話』 前編 中編 後編
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